キウス周堤墓群

• 冷涼な気候による地下水位の低下とともに段丘の裾が広がり、土地利用の範囲も拡大しました。近くの川では、遡上してきたサケ・マスを捕獲するなど漁労が行われていたと考えられています。
• 独特な構造の共同墓地が構築され、9基のうち7基は他に類を見ない大規模なもので、2号周堤墓では積み上げられた堤の土の量が約3000㎥と推計されるほどです。
• 多様な祭祀・儀礼のなかでも、葬礼に関する儀式が特化した定住の成熟期後半(Ⅲb)に、大規模な土手をもつ共同墓地が現れたことは、高い精神性と社会の複雑化を表しています。

周堤墓群は千歳市街地の北東8km、石狩低地帯（長沼低地）東縁にあたる標高15~21mの馬追丘陵(まおいきゅうりょう)西麓に位置します。かつては、近くに大小の河川が流れ込む広大な湿地帯があり、後背の丘陵には落葉広葉樹の森が広がっていました。湿地帯では、河川の氾濫などにより低地に水が溜まり、オサツトー（長都沼）やマオイトー（馬追沼）といった大小さまざまな沼がありましたが、現在は排水路の整備などによって、沼は消失しています。

周堤墓は環状土雛(かんじょうどり)とも呼ばれる墓地遺構で、地面を円形に掘りくぼめ、その堀った土を周囲に積み上げてつくった土手（周堤）の内側のくぼみ（竪穴）に、複数の土坑墓を設けています。つくられたのは縄文時代後期後葉（約3200年前）の北海道でだけです。キウス周堤墓群のほか、道央から道東の10以上の遺跡で約70基が確認され、その8割以上が千歳市とその周辺地域に集中しています。周堤墓の一般的な大きさは周堤の外径が10~30m、その点で、キウス周堤墓群は傑出した存在といえます。