斜里朱円周堤墓群

斜里町にある縄文時代後期（3200年前）の周堤墓群です。奥蘂別川の氾濫原に面した段丘上にあり、東に海別岳、南に斜里岳を望むことができます。周堤墓は、北海道のみでみつかっている独特の形態の共同墓地です。千歳市キウス周堤墓群や恵庭市柏木B遺跡など石狩低地帯に集中していますが、芦別市野花南周堤墓群、標津町伊茶仁チシネ第3竪穴群遺跡など北海道北部や北海道東部でもみつかっています。昭和23・24年（1948・1949年）の発掘調査では、初めて周堤墓が縄文時代の墓であることが明らかになり、学史上重要な遺跡であることから、昭和32年（1957年）に道指定史跡に指定されています。

周堤墓は、円形の竪穴を堀り、掘った土をドーナッツ状に積み上げて土手とした内側に複数の墓がつくられている共同墓地です。朱円周堤墓群では、A号、B号の２基の周堤墓があり、A号には20基以上、B号には１基の墓があります。それぞれの墓の上にはひとかかえもある石が直経１ｍ程度の円形に並べられています。　

一般的には複数の時期の遺跡が同じ場所につくられることが多く、様々な時期の遺物が混じりあってみつかりますが、周堤墓の周囲では周堤墓に供えられた遺物以外はほとんどみつかっていません。また、周辺から周堤墓と同じ時期の遺構や遺物もらみつかっていないことから、周堤墓に葬られた人々は周堤墓から少し離れた集落に住んでいたと考えられます。

墓から、土器と土版、土製円環、石棒、ヒスイ製を含む玉類、サメ歯、炭化した布片、漆製の破片や人骨と歯などがみつかりました。みつかった土器は土地の所有者に因んで栗沢式土器と呼ばれる、北海道東部の縄文時代後期末の土器型式*)の標式資料となっています。また、北海道東部では自生しないウルシの製品や新潟県糸魚川産とされるヒスイが出土されており、当時の人々が広域に交流していたことがうかがわれます。これらの遺物は昭和32年（1957年）に道指定史跡と一括で指定され、斜里町立知床博物館でみることができます。

*)縄文時代における時期を表す単位。縄文土器の形や文様は、地域や時期によって異なっており、100年程度の幅で土器が作られた時期を推定できる。標式資料はその分類の根拠となる資料で、生物学のタイプ標本にあたる。